複数の帰結のための生存解析

  • 生存解析の基本パターンは、異なる介入条件下における、一つの帰結の生起パターンの比較である
  • この基本パターンから外れた場合の生存解析を考えたい
  • 「一つの帰結」を「二つの(複数の)帰結」に変えれば、ひとまずは基本パターンから外れさせられる
  • こんなペイパーがあって参考になる

www.jstage.jst.go.jp

    • この中で議論されている概念をいくつか拾っておく
      • Competing risk
      • Cause-specific hazard model vs. substitution hazard model
      • Competing event の Censoringをどうするか(Censoring とは何か:

https://tinyheero.github.io/2016/05/12/survival-analysis.html#censoring)

      • Gray test
        • "Gray's test for subdistribution hazards. A number of tests have been proposed for comparing cumulative incidence functions,9,13 but the first and perhaps the most frequently used is that by Gray.14 Gray's test is used to evaluate hypotheses of equality of cause-specific cumulative incidence functions between two groups, but as in the case of comparing survival curves, the test actually compares an underlying function of the cumulative incidence function, namely the subdistribution hazard. The subdistribution hazard can be thought of as the hazard of an artificial time variable T′ defined as T′ = T if a failure resulting from cause k occurred and T′ = ∞ if other failure types occurred.14,15 In the absence of censoring, Gray's test is identical to the log-rank test computed using T′ as the time variable.14" (Choice and Interpretation of Statistical Tests Used When Competing Risks Are Present - PMCから引用)
      • 簡単に言えば、時刻関数を取り直した生存解析。その生存解析では、着目事象が起こらず、別の事象が起きた場合(その場合に着目事象が起きる機会はなくなったと考える)には、無限に遠い将来に着目事象が起きたとみなしてsubstitution 時間関数を用いる手法
  • RでGray test : RPubs - Competing risk analysisのデモ, こちらも : https://stacks.cdc.gov/view/cdc/22757/cdc_22757_DS11.pdf
  • こんな状況を考えてみたい
  • 心房細動性脳梗塞の予防(生起確率の低減)のために抗凝固療法・抗血小板療法を行うと、出血性イベント・外傷性出血イベントのリスクが高まる(生起確率の増加)。抗凝固療法・抗血小板療法の有無により、この二種類のイベントの生起確率を統合して解析したいとする
  • 一つの考え方は、二種類のイベントの両方-freeな期間に着目することだろう。この場合には、二種類のイベントの少なくとも1種類が起きるかどうかを問題にすることになる。もし、二種類のイベントのそれぞれの生起パターンがわかっていて(もしくは、データに基づいて推定できるとして)、二種類のイベントが相互に独立ならば、両方-freeな期間の確率密度分布は、単純に独立同時分布を作ってそれに基づいて求めることができる(推定が簡単だ)。しかしながら、二種類のイベントが非独立であるならば、非独立同時分布を知る(推定する)ことが必要となる
  • 実際、梗塞が起きやすい状態は出血が起きにくく、逆もしかり、というのが、二種類のイベントのベースラインの関係である。そのうえで、局所の微小出血を契機に(局所的な?)凝固線溶・止血条件の変化が惹起されることで梗塞がもたらされるというようなこととその逆とが考えられるので、両者の関係は複雑であろう。その関係をよく調べるには、相当念入りな記述統計が必要となりそうである。この非同時関係が考えるだけで複雑そうなので、この二種類の転帰の総合的生存解析はほとんど見当たらないのが現状のようだ
  • 「二種類のイベントの両方-freeな期間」という単純な指標であっても、上記の「非独立同時分布」の考慮が必要となったが、指標の複雑化も可能である。そしてそのときも、「非独立同時分布」を考慮することは適切と思われるので、この解析に確率モデルを入れ、評価指標に複雑な関数を入れることが、この文脈での生存解析には必要と思われる
  • 実際に行うとしたら、ベイズ・STANなどが現実的かもしれない

vasishth.github.io